はじめに

不倫・浮気による慰謝料を請求する際に、相手方に対する怒りが収まらず、懲らしめてやりたいというお気持ちになるかもしれません。
また、相手方は何らかの社会的な制裁を受けるべきであるとお考えになるかもしれません。
そのようなお気持ちは分かります。
しかし、感情的になってやり過ぎの行動に出てしまうと、逆にご自身が加害者となって損害賠償責任等を負わされる可能性もありますので、注意が必要です。
今回のコラムでは、不倫・浮気による慰謝料を請求する際に、やってはいけないことをご説明させていただきます。

①相手方の職場・親に慰謝料を請求する

不倫・浮気は、あくまでも当人同士の問題です。
当人同士というのは、慰謝料を請求する側(不倫・浮気をされた被害者)と、その配偶者および不倫・浮気相手という意味です。
相手方の職場・親は法律上無関係であり、慰謝料の支払義務はありません。
また、不倫・浮気をしないように監督する法律上の責任もありません。
したがって、相手方の職場・親に慰謝料を請求することはできません。

②相手方の職場・実家・家族に知らせる・怒鳴り込む

相手方の職場・実家・家族に不倫・浮気の事実を知らせたり、怒鳴り込んだりすることもまた、リスクがあります。
不倫・浮気はあくまでも当人同士の問題であり、相手方の職場・実家・家族は第三者です。
そのため、不倫・浮気の事実を相手方の職場・実家に告げる行動は、刑事上の名誉棄損罪に該当する可能性があり、民事上はプライバシー権侵害による不法行為(損害賠償責任)に当たる可能性があります。
したがって、相手方の職場・実家・家族に知らせる・怒鳴り込むという行動に出てはいけません。

③相手方の職場・実家・家族に訪問・連絡する旨を告げる

相手方の職場・実家・家族に訪問・連絡する旨を告げる行為は、脅しと評価されます。
上記のように、不倫・浮気の事実を相手方の職場・実家・家族に知らせることは、刑事上・民事上違法となり得る行動です。
そして、そのような行動を行う旨を告知する行為は、刑事上は脅迫罪に該当することがありますし、「職場・実家・家族に訪問・連絡されたくなかったら、慰謝料〇〇〇万円を支払え/〇〇しろ」などと要求する行為は、強要罪に該当する可能性があります。
また、民事上も不法行為(損害賠償責任)が成立し得るものです。
したがって、相手方の職場・実家・家族に訪問・連絡する旨を告げるという行動に出てはいけません。

④相手方に退職を要求する

社内不倫(職場内の不倫・浮気)の場合に、配偶者と不倫・浮気相手が今後も同じ職場にいるのは気分が良くないでしょう。
しかし、だからと言って、不倫・浮気相手に退職を要求することはできません。
退職を要求する法的な根拠はなく、退職する/しないの職業選択は不倫・浮気相手の自由だからです。
不倫・浮気相手が退職せずに配偶者と同じ職場に残る場合には、慰謝料の示談書に「今後は私的な連絡・接触をしない」という内容を盛り込むなどの対応を取ることとなるでしょう。

⑤暴言・脅迫

相手方への暴言は、状況によっては刑事上の侮辱罪に該当する可能性があります。
また、脅迫行為には脅迫罪の適用を受ける可能性がありますし、民事上は不法行為(損害賠償責任)に当たり得るものです。
どこからが違法な暴言・脅迫に当たるのかは線引きが難しく、発言内容や状況次第ではあるのですが、あまりに乱暴な言動は後々足をすくわれる可能性があります。
相手方に対する言動には、ご注意いただきたいと思います。

⑥暴力

暴行が犯罪であることは言うまでもありません。
刑事上の暴行罪・傷害罪に該当し得る行為であり、民事上も不法行為(損害賠償責任)が成立します。
暴力は絶対にいけません。

まとめ

以上のように、不倫・浮気の問題において相手方と向き合う際には、感情的になってやり過ぎの行為に出ることのないように、気持ちをぐっとこらえることが必要です。
そして、冷静に慰謝料請求の交渉・手続を進めていくことが大切なのです。
不倫・浮気による慰謝料請求についてお困りのことがありましたら、法律の専門家である弁護士にご相談いただくのがよいでしょう。
当事務所では、慰謝料請求の事案を多数取り扱っております。
お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。

(弁護士・木村哲也)

当事務所の弁護士が書いたコラムです。
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